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2003.07 

 ○次なる目標は100年防水
 東京工業大学建築物理センター 教授
 田中享二

 建築における最近の耐久性の論議は100年単位になってきた。当然である。今のままのやり方で突き進んでいったら,健全な環境を保てないことが明らかになっているからである。そうすると防水だって100年単位になっても良いでないか。何と乱暴なことを! 一気に100年とは。やっと10年という呪縛から開放され長ライフ防水層へ競争が始まり,やっと30年という提案が出てくるようになったばかりだというのに,と思われるかもしれないが,ここはひとつ考えてもらいたい。

 今まで防水材料は有機材料だから経年劣化は避けられないので,建物全ライフのなかでは必ず途中交換が必要である。だから,10年位でまあよいやという建築側だけの論理での言い方が通っていた。しかし建物本体が100年を真剣にめざしつつある時に,建物本体を水から守ろうとする材料が途中でおかしくなるのは,普通の感覚として納得がゆくだろうか。昔の瓦屋根だって,途中いろいろと不具合の修理を続けながらでも,とりあえず建物本体と同じ程度のライフを持っていたではないか。防水も100年位がんばってもらいたいと思うのは当然の期待である。だから次なる目標は100年である。

 これがウレタン防水で可能か。ここを考えるのが今日の課題である。結論から先に書く。可能だと思う。それにはまず耐久性から見たときのウレタン防水の長所と短所を見ておく必要がある。以前仲間と「環境と防水」という研究を立ち上げ,リサイクルを勉強したことがある。環境にやさしい防水層を作るためにはいくつかの手段があるが,使用済み材料をリサイクルできることもポイントとなるからである。

 残念なことにウレタン防水ではそれが結構難しいのだ。理由はふたつある。まず下地から剥離させることが難しいこと,いまひとつはもし解体できたとしても,材料自身のリサイクル性が悪いことである。いろいろ検討してみたが,小さなチップにして次のウレタン防水に混ぜ込むくらいしか実用性のある方策は見出せなかった。これは大きなハンディキャップである。だから何としても長期間,現役でがんばるより仕方がないのだ。幸いウレタン防水は塗布もしくは吹き付けによる工法であり,工夫すれば塗り重ねのテクニックを使うことができる。これは大いなる利点である。単純な接着剤によるかぶせとは異なり,一体化した防水層をいつまでも作り続けることができるのである。

 問題はこれをいかにシステム化するかである。これには逆の発想が必要かもしれない。これからの防水層は性能で設計,選択される。耐久性についても同様である。従ってこれからの防水層の選定には「何年もつか」が差別化のキーワードになる。その時のグレードは,多分10年,20年,30年,50年,100年となるだろう。今まで防水層は有機材料なのでそんなに長持ちしない,せいぜい10年程度と言われてきた。しかししっかりした防水層を作り,屋外暴露試験などで確かめてみると,もっともっと長持ちする。筆者の博士論文は防水材料の耐候性研究で,いやになるほど体験したから実感である。

 今まで防水関係者はユーザーの頭に耐久性10年をしみこませるのに成功していたから,ユーザー側から耐久性に関して,それ以上の要求はなかなか出て来にくい構造になっていた。この錯覚を利用していつまでも商売をし続けるのも,経済論理のなかでは成り立つのかもしれないが,早晩その論理はくずれる。実際,ユーザーも建築側から発信される説明のおかしさに気付きはじめていて,最近は20年の耐久性を公然と要求するようになってきている。

 とはいってもウレタンが有機材料である以上,今のままの仕様での100年はありえない。だから逆問題として考える必要があるのだ。100年の防水を確保するためにはどうすればよいのか,という問題設定から考えはじめることが必要である。ここで塗膜系防水の有利点,塗り重ねが可能という特徴がフルに生きてくる。これをシステムとして組み込めば,可能性はあるし実現性も高い。ウレタン防水は100年防水システムに至近距離にある。

 防水100年の意義は実は深いところにある。今まで防水は設計者やゼネコンを向いてだけ仕事をしていた。やっと最近になって本当のユーザーの方を向き始めるようになった。そしてその先の相手は地球人全体になる。これが本当の意味である。非現実的と言われるかもしれないが,100年防水のコンセプト作りを一度試みていただきたいと思う。以外と楽しい作業になるかもしれない。

「ウレタン建材」第26号より