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2004.2 

 ○100年防水へのアプローチ(ウレタン防水の長寿命化)
 広報委員会

「ウレタン建材」第27号より 


 「ウレタン建材」26号誌に、東京工業大学田中教授が“次なる目標は100年防水”と題した一文をお寄せ下さった。田中教授のご了解を頂き、当工業会のホームページに全文を掲載致しております。
 田中教授はこの中で、「建築における最近の耐久性の議論は100年単位になってきており、建物本体が100年をめざしつつあるのだから防水も100年位頑張ってもらいたい」と期待を表明されている。
 防水材料の耐候性研究で博士論文を書かれた田中教授は、「防水材および防水層が有機材料である以上、今のままの仕様での100年はありえない」と喝破しておられる。しかし「100年の防水を確保するためにはどうすればよいのか、という問題設定から考えはじめることが必要である。ここで塗膜系防水の有利点、塗り重ねが可能という特徴がフルに生きてくる。これをシステムとして組み込めば、可能性はあるし実現性も高い。ウレタン防水は100年防水に至近距離にある」というありがたいメッセージを贈って下さった。

 田中教授がご指摘されている「ウレタン防水層の塗り重ね」は業界ではオーバーレイ(overlay)と称し、ウレタン防水施工後10数年を経過した屋上防水改修時に実施されるケースが多い。
 なお、当工業会の「環境宣言」運用指針(平成14年5月制定)3.省資源・環境〔廃棄物の低減〕に“既存防水層を再利用・延命を図るべく同質のウレタン防水材を塗り重ね、撤去廃材・産業廃棄物の削減とライフサイクルコストを低減します”と謳っております。
 ウレタン防水改修時にウレタン防水層の塗り重ねを行うメリットは、
1)建物を使用している間は、約10年サイクルで毎回「ウレタン防水層の塗り重ね」を行い、建物使用期間中のライフサイクルコスト(防水改修費用)は格段に優位。
2)既存ウレタン防水層の撤去を必要とせず、撤去費用および撤去廃材が最小限に押さえられ、建設廃材の大幅削減・工事費用の大幅縮減に寄与する。
B防水下地を新たに作る必要がなく、工事期間が大幅に短縮出来る。
3)工事期間の騒音が少なく、降雨による漏水も心配なく居住者への迷惑が少ない。
4)屋上の用途変更が容易。(非歩行から歩行へ、歩行仕様からスポーツ仕様・植栽仕様等へ)
5)軽量な仕様で、構造上で荷重負担を掛けない。
6)色彩計画が自由にできる。
等があり、防水改修時にウレタン防水が支持・評価される要因でもある。
 ウレタン防水が100年防水に向けて取り組むのであれば、10年以上経年したウレタン防水層の経年劣化データを検証する必要があろう。つまり、10年の経年にも耐えられない物性であれば100年防水を志向することはナンセンスと言える。
 屋上防水の劣化は、図1に示したように「熱・水分・空気・大気汚染物・機械的ストレス・微生物」など様々な要因に左右される。
 1993年の日本建築学会において、建設省総合技術開発プロジェクト(略称 総プロ)「建築物の耐久性向上技術の開発」の一環として、屋根防水層の自然暴露の結果が発表された。1982年12月から1992年11月までの10年間にわたって寒冷地(札幌市)、一般温暖地(茨城県つくば市)、亜熱帯地(宮崎県延岡市)の3ヶ所の屋上暴露であった。ウレタン防水は、タール・ノンタール・カラーの3種で規定の試験体に25mmの断熱材(ポリエチレン)の上にそれぞれウレタン3.5kg/m2、仕上げ塗料としてシルバー塗料ないしトップコートという仕様であった。
 詳しくは、1993年日本建築学会学術講演梗概集「防水材料の屋上暴露試験」(その13)−10年後の塗膜防水の劣化状況−に譲るとして、「総合して考察すれば、ウレタン塗膜防水は10年経過後にもJIS規格値の性能保持していることが確認され、劣化は僅少であった。」としている(表1)。

 今回提示する経年データは、1986年4月改修時(既存防水はアスファルト防水クリンカータイル仕上げ)にクリンカータイルを撤去せず、その上に改質アスファルトシートとカラーウレタン3.5kg/m2の複合防水仕様でテニスコート3面(約3,000m2)を施工した全共連ビル(東京都千代田区)のフェンス基礎部の一部を14年経過後の2000年5月に切開採集した試験体(ウレタン密着3mm厚)の物性データである。
 つまり、大気汚染の厳しい東京都心の屋上で商業用テニスコートとして利用されているビル屋上での14年経過物性データであり、現実に即した事例といえる(表2)。

写真1,2 オーバーレイ(塗り重ね)

図1 防水層劣化要因系統図

表1 カラーウレタン(露出)

表2 カラーウレタン施工後14年経過後の物性

【概要】現 場 名:全共連ビル
    広 報 名:DD-S3工法(昭和61年施工)
    ウレタン名:エバーコート(ダイフレックス)
    経過時間:約14年(平成12年採用)
【試験方法】物性試験(JIS A 6021に準拠)
【試験結果】

項 目

初期

約14年経過後
引張強さ[N/mm]

3.9

3.5(89.7)
破断時の伸び率[%]

600

575(95.8)
引裂強さ[N/mm]

19

22(115.8)
硬度[タイプA]

55

60(109.1)
外観変化

変化なし

図2

 JIS A 6021に準拠した物性試験では、初期物性値と対比し引張強さは物性保持率89.7%、破断時の伸び率95.8%、引裂強さ115.8%となり、14年経過後にも充分物性を保持し防水機能を果たしているといえる。
 このように、ウレタン防水施工10数年を経過した後に何度もウレタンを塗り増しし、防水層の延命化を図り、建物の長寿命化に対応することが出来るのはウレタン防水の持つ大きな特徴である。

 当工業会が推奨する「塗り増し仕様」は、図2のように層間接着剤塗布後にウレタン防水層最低3mm以上の厚さを確保することになっている。
 また、国土交通省の改修工事標準仕様書(表3)ではX−2仕様つまり3mm厚が規定されている(表4)。

 防水層の耐久性は防水層の厚みに比例して高まることが立証されている。従って、改修時には出来るだけ(2mm以上)厚みを確保することが望まれる。

 なお、ウレタン防水は材料の進化に伴い従来の手塗りウレタンと比べ物性が大幅に向上してきている事実を披露しておきたい。
 参考までに表5に進化した超速硬化ウレタン(無溶剤タイプ)および硬質ウレタン(無溶剤タイプ)と従来タイプのウレタンとの物性比較を掲示する。
 当然のことながら、物性値が向上している進化したウレタン(超速硬化ウレタン・硬質ウレタン)のほうが耐久性は格段に向上しており、建物の長寿命化が求められる時代の防水には、進化したウレタンの活躍余地はますます大きく、更なる用途拡大として信頼性確保に繋がるものと期待される。

→表拡大

「ウレタン建材」第27号より